January 2014

A LOSS FOR WORDS『BEFORE IT CAVES』

Loss For Words1999年にマサチューセッツ州で結成されたメロコアバンドの3rd.。ノイジーでエッジの効いた王道メロコア。美しく流れるようなサウンドで、スクリーミングやエモに針が振れることなく、メロコアど真ん中の素直な音を作っている。このジャンルでは珍しく透き通るハイトーンボーカルではなく、骨太の野性的Vo.でハスキーに熱唱している。これが張りつめたギターやうねるようなベースとうまく絡み合ってアグレッシヴなテイストを成立させている(バスドラの音がキレイ!)。そのせいか、BGMとして聞き流せないフックがあちこちにあって、ゴツゴツした感触が心地いい。リズムがとりやすく、ややオールドスタイルのメロディーは、何も考えなくても自然に体の中に入ってくる。緩急をうまくつけるのは当然として、サビで抜き拍を使ったり、気づかない程度の転調を取り入れたりと小ワザがキラリと光る。アコギ一本で始まるバラードも秀逸!(←こういうところにも実力が見て取れる)
2013.11.06
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THE LETTER BLACK『REBUILD』

3672006年、ペンシルバニアで結成されたクリスチャン系ゴシックバンドの3rd.。春にリリース予定だったが、3トラック追加レコーディングしたため、リリースが秋に延期された。練りに練ったアルバムだけに、骨太でストーリー性の高い演出が施され、聴きごたえ十分だ。サウンドはゴシックパンクがベースだが、ゴシックメタルとの中間と言えるかもしれない。シンフォニックでエキセントリックな空気感をうまく構築している。同じクリスチャンバンドの SKILLET や FIREFLIGHT のような力強くピーンと張りつめた空気が支配する。不思議なモノトーン空間に悲しいピアノの旋律が走り、大地の底から突き上げるようなベースラインが螺旋状にうねる。悲哀に満ちた抒情的な女性ボーカルに時折デスボイスが絡む。男女混声の時もあれば、荒ぶる感情をぶつけたりと、いろんな角度から攻めてくる。美しくもハードエッジな変調シアトリカル・サウンドが病みつきになりそうだ。
2013.11.12
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THAUROROD『ANTEINFERNO』

Thaurorod22002年にフィンランドで結成されたシンフォニック/メロスピ・メタルバンド、THAUROROD (サウロロッド)の2nd.。メンバーの入れ代わりが激しく、まったく定着しないのだが、音楽のクオリティーはハンパなく高い。どこをどう切ってもクサメロの連続で、それがDRAGONFORCE級の爆走でプレイされる。北欧劇メロファンのツボをこれでもかと刺激する。Vo.はキンキンのハイトーンではない分、パワーと美しさを兼ね備えた安定感があり、コーラスも豪華絢爛な演出を見事にサポート。強引な転調はなく、自然な流れの中で飽きさせない起伏を作っている。ソロパートも延々とプレイせず必要最少限の尺でコンパクトに収めている。シンフォニーの調合もスパイスとしてポイントを押さえた使い方で、なんでもかんでも前へ前へと押し出す強引さはまったく感じない。むしろ涼しい顔をして濃厚で超絶技巧のメロスピを連射してくる。しかもメロディーや構成のセンスが最高で、ぐいぐい惹きつけられる。快感どころの話ではない。とんでもないバンドに出会ってしまった!と胸躍り心拍数は上がりっぱなしなのだ。
2013.12.11
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ANGELICA『THRIVE』

angelicaスウェーデンのゴシックメタル・バンド、THE MURDER OF MY SWEET のVo.アンジェリカ・ライリンの1st.ソロアルバム。THE MURDER OF MY SWEET 結成当初からボーカリストとしてフロントに立ってきた彼女だが、2012年からソロプロジェクトが始動し始めた。サウンドは80年代の懐かしいハードロック調で、ミッドテンポの楽曲からパワーバラードが中心。ゴシック色は薄く、すごくストレートでノスタルジックな抒情サウンドだ。覚えやすい歌メロで、オブリガードをゆったりめにとっている点や、リバーブが深く、シンセが強いトラックダウンも時代性を感じる。アンジェリカの歌唱のうまさは、このサウンドを古臭く聞こえなくしているところだ。80年代にタイムトリップしたわけでもないし、今の最旬サウンドを体験できるわけでもない不思議な時間の隙間にいて、ずっと聴いていても飽きさせない。リリース時点で32歳だが、安定とすごみがあるのにチャーミングでガーリーな歌声がそうさせているのだろうか。過剰に演出せず淡々と歌いつつ、にじみ出るように気持ちを込めていくあたりは憎いテクだ。
2013.11.13
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LEAVES' EYES『SYMPHONIES OF THE NIGHT』

920ノルウェーのゴシック・メタルバンド、THEATRE OF TRAGEDYのボーカリストだったリヴ・クリスティンが2003年にバンドをクビになる(急な音楽性の変更によりバンドが危機的状況にあったため、メンバーを一新する必要があった)。傷ついたリヴは、夫のアレクサンダー・クルル(メタルバンドATROCITYのVo.)と新バンドLEAVES' EYESを結成。そして2004年にデビュー・アルバムをリリース(ちなみにレコーディング中に男の子を出産している)。本作は5枚目で、物語性を重視した演出効果の高いシンフォニック&ゴシックアルバムになっている。荒廃して時間を失った広大な地を永遠にさまよう孤独な旅人。明滅する光と影を強烈に表現した高低差の激しいアルバムだ。貫録のオペラ的Vo.と、アレクサンダーのデスボイスが芸術的に絡み合う。さらにリヴの声は地声からファルセットまで無段階に発声されるだけでなく、ささやきしゃべるように歌ってみたりと表現力抜群。そしてスピードもシーンもどんどん変化していく楽曲のバリエーションの豊富さには感服するしかない。エピックアルバムとはいえ、ここまでリアルに世界観を表現されると、もはや現実との境界がなくなる。
2013.11.13
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HANDS LIKE HOUSES『unimagine』

_AA1500_2008年に結成されたオーストラリア出身のエモバンドの2nd.。中低域がしっかり前に出たラウドなサウンドに、感情をストレートにぶつけるボーカルスタイルは、スクリーミングとまではいかないが熱唱型でパワフルだ。エッジの立ったギラギラしたパンクを骨太にプレイしているのに、何ともいえないもの悲しさや傷を抱えた痛みが無数に飛び交っている。ゴツっとした音にピアノがせつなく入ってきたり、マイナー音色を多用しつつ、力強い加速と哀愁の減速をうまく繰り返す。しかもどれだけ楽曲パターンがあるのかと思うほど変幻自在だ。特にピアノをバックに静かに歌い上げるモノトーンのバラードは、胸がしめつけられる。激しく燃えさかる感情の中に、永久凍土の涙がエンドレスで落ちていくようなオトナ激情エモパンク。ずっと心の震えが止まらない極上のアルバム。
2013.07.23
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NAUTILUZ『LEAVING ALL BEHIND』

NAUTILUZ南米ペルーで2009年に結成されたメロディックスピード・メタルバンドのデビュー・アルバム。2011年にレコーディングに入ったものの途中でVo.が脱退するというアクシデントがあり、2013年のリリースになってしまった。そのせいか熟成された新人離れした渋みのあるアルバムになっている。スピード感は迫力の高速ドラムはもちろん超技巧ベースの功績が大きい。激しい転調やキーボードの幻想美旋律はお約束で快感。時にはピアノやストリングスがシンフォニックに入り、重厚な男女コーラスが加わったりと多彩な小ワザが光る。ピアノのパワーバラードも良いセンスで聴かせてくれる。クサメロが地層のように体積しているのだが、洗練された美しい輝きより、少し野性味のあるドロっとジェル状の様式美が支配する。日本版ボーナストラックは、なんとSTRATOVARIUSの『Black Diamond』をカバー(これが忠実なコピーで妙にツボ)。
2013.08.14
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THE HYPE THEORY『CAPTIVES』

HypeTheory2010年にイギリスにて結成されたメロコアバンドの2nd.。キャッチーでアップリフティングな楽曲と、倍音の強い女性ボーカルKatyの伸びのある声が心地いい。疾走感あふれるラウドなナンバーから切ないエモメロまで、引き出しが豊富でしっかり聴かせる充実した内容だ。ストップ&ゴーを頻繁に繰り返したり、拍を抜いて絶妙にスピードコントロールしている。そのうえで常に低音域がずっしり響いて大地に深く根を張った腰のあるサウンドになっている。情感豊かに気持ちをぶつけてくるボーカリングも艶っぽくて魅力だ。だらだらルーズに流さず、かちっとタイトな音を次々繰り出してくるので、ずっと聴いていても少しも飽きない。結構凝った音作りなのに、どこかベーシックでオーソドックスな印象を受ける。そこにキーボードがきらびやかにスパイスされている。これで一気に都会的パンクへと進化する。ギラギラとがっているのに妙に安心感があるのは、新旧の良いところを黄金比でブレンドした職人サウンドだからか。
2013.07.10
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XANDRIA『NEVERWORLDS END』

Xandria1997年に結成されたドイツのシンフォニック・ゴシックメタルバンドの5th.。ゴシック・メタル系のバンドをYouTubeでプレイしていると、かなりの確率でXANDRIAが関連リンクに出てくる。最初はスルーしていたが試しに聴いてみるとビックリ。実に素晴らしい本格的ゴシック曲の数々。すぐにCDをゲットした。メンバーチェンジの激しいバンドで現在残っているオリジナルメンバーはギタリストのみ。2010年に新加入した女性ボーカルの筋金入りオペラティック&ハイエナジーな声は身震いするほど。その天空に反響する歌声を無限のゴシックワールドに同化されているのが豪華絢爛で雄大なオーケストレーションと大地から噴き上がるようなゴシックサウンド。なんだこのダイナミックな音圧は! 猛スピードで音の波紋が銀河の果てまで広がっていくようだ。シンフォニックなエピックアルバムは独特の世界観を再現し、聴き手をその異空間へと引き込んでいくが、そういうやさしいレベルではない。音が出た瞬間、自分がいる場所が別世界になる。 空気や時間、風や香りまでもがリアルに体感できる。恐ろしいアルバムだ。
2012.05.09
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ギャラリー
  • courage my love『Becoming』『For Now』
  • courage my love『Becoming』『For Now』
  • AMBERIAN DAWN『Magic Forest』
  • VICTORIUS『DREAMCHASER』
  • STREAM OF PASSION『A WAR OF OUR OWN』
  • DERDIAN『HUMAN RESET』