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AMBERIAN DAWN『Magic Forest』

Amberian-Dawn-Magic-Forest2006年にフィンランドで結成されたシンフォニック・ゴシック・メタルバンドの5th.。ゴシック特有のスローで粘着質なサウンドではなく、実にテンポよく進んでいく作り方は気持ちいい。軽快と言ってもいいほどのメロハー色の強い音は、シンフォニックの厚みのある演出効果で重みのある格式をキープしている。これが新時代のゴシックだと言わんばかりの清らかな水の流れだ。ダークなアンダーワールドであるはずの音色は、ピュアな光をまとい、新たな姿となって世界を支配している。妙に男前で潔くポップにアレンジされていて耳に新鮮だ。もはや別次元に跳躍したのかと思わせるが、漆黒の香りがしっかり漂う。清濁ハイブリッドな掛け合わせはクサメロの翼を生み出したのかもしれない。ファンの間では賛否分かれそうだが、こういう変容を経てバンドは熟していくものだ。世界観がどう変化しようと、クオリティーが維持されているのなら、新風に吹かれるのいいではないか。
2014.06.18
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ANCIENT BARDS『A New Dawn Ending』

Ancient Bards2007年、イタリアにて結成されたシンフォニック・ゴシック・メタルバンドの3rd.。2nd.につづいて今回もファイナルファンタジーのカバーをボートラに収録。ゴシックメタルと言えばスピード感に欠けるが(そもそもゴシックにスピードメタルのような疾走は不要)、このバンドはゴシックの重々しい魔空間の中を超高速で駆け抜ける。しかもシンフォニック要素たっぷりの壮大な暗黒世界の雰囲気をしっかり維持している。これはメタルファンなら誰しも理想として一度はイメージしたユートピアではないだろうか。そんな夢のような要素を詰め込み、暗黒の森深く美しきゴシックサウンドをドラマティックに奏でている。力強い音圧とシンフォニックの荘厳な様式美、ハイスピードで切り刻んでくる重低音(特に高速技巧ベースに注目)、それでいて悲しく儚いメロディーが隅々まで浸透していく。泣きのギターをたっぷり効かせたり幻想的なキーボードにエレガントなピアノ、サントラ的ストリングス隊、ホーン、クワイアといった贅沢で格式高い演出が行き届いたエピックアルバム。RHAPSODY OF FIREのファビオ・リオーネ(Vo)がゲスト参加。
2014.04.23
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ARMORY『EMPYREAN REALMS』

ARMORY2001年、マサチューセッツ州で結成されたメロディック・パワー・メタル・バンドの3rd.。
80年代HRの華やかさと現代北欧クサメロとをうまく化学反応させたスリリングなメタルサウンド。軽快なシンセビートと、少しレトロ感を放ちながら疾走するベースライン、心地いいキーボードに良い意味で泥臭いギターが絡み合う。レトロなドラムパターンを高速化して、重みを残した爽快感など、現代アレンジが絶妙だ。単純に80年代テイストというだけでないのが嬉しい。特別大げさな転調はないが、起伏に飛んだメロディーラインと、どんどん扉を開けていくような展開に心躍る。とにかくアレンジや楽曲構成、スピード感のセンスが抜群。ひとつひとつの音をシンプルにした上で、リスナーを高揚させるにはどうしたらいいかを研究しつくしたサウンドで、つい聴き惚れてしまう巧妙な仕掛けがたくさんある。決して目立たない芸術的技巧に関心しながら聴きたい。
2014.03.12
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A LOSS FOR WORDS『BEFORE IT CAVES』

Loss For Words1999年にマサチューセッツ州で結成されたメロコアバンドの3rd.。ノイジーでエッジの効いた王道メロコア。美しく流れるようなサウンドで、スクリーミングやエモに針が振れることなく、メロコアど真ん中の素直な音を作っている。このジャンルでは珍しく透き通るハイトーンボーカルではなく、骨太の野性的Vo.でハスキーに熱唱している。これが張りつめたギターやうねるようなベースとうまく絡み合ってアグレッシヴなテイストを成立させている(バスドラの音がキレイ!)。そのせいか、BGMとして聞き流せないフックがあちこちにあって、ゴツゴツした感触が心地いい。リズムがとりやすく、ややオールドスタイルのメロディーは、何も考えなくても自然に体の中に入ってくる。緩急をうまくつけるのは当然として、サビで抜き拍を使ったり、気づかない程度の転調を取り入れたりと小ワザがキラリと光る。アコギ一本で始まるバラードも秀逸!(←こういうところにも実力が見て取れる)
2013.11.06
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ANGELICA『THRIVE』

angelicaスウェーデンのゴシックメタル・バンド、THE MURDER OF MY SWEET のVo.アンジェリカ・ライリンの1st.ソロアルバム。THE MURDER OF MY SWEET 結成当初からボーカリストとしてフロントに立ってきた彼女だが、2012年からソロプロジェクトが始動し始めた。サウンドは80年代の懐かしいハードロック調で、ミッドテンポの楽曲からパワーバラードが中心。ゴシック色は薄く、すごくストレートでノスタルジックな抒情サウンドだ。覚えやすい歌メロで、オブリガードをゆったりめにとっている点や、リバーブが深く、シンセが強いトラックダウンも時代性を感じる。アンジェリカの歌唱のうまさは、このサウンドを古臭く聞こえなくしているところだ。80年代にタイムトリップしたわけでもないし、今の最旬サウンドを体験できるわけでもない不思議な時間の隙間にいて、ずっと聴いていても飽きさせない。リリース時点で32歳だが、安定とすごみがあるのにチャーミングでガーリーな歌声がそうさせているのだろうか。過剰に演出せず淡々と歌いつつ、にじみ出るように気持ちを込めていくあたりは憎いテクだ。
2013.11.13
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ALKALINE TRIO『My Shame Is True』

Alkaline_Trio1997年にシカゴで結成されたメロコア・バンドの 8th.。これがエピタフ移籍第2弾のアルバムになる。超ベテランの大御所バンドが、スタイルを変えず若々しいテンションをキープして期待通りの曲を生み出してくれるのは、往年のファンからするとこんなに嬉しいことはない。円熟味のある王道メロコアで、小細工なしのストレートなサウンド。それでいて一本調子でなく、わずか3分の中にドラマ性とスリリングな緊張感がしっかりある。そうそうメロコアの神髄ってのはコレなんだと大きくうなずきたくなる。手数の多いドラミング、うなりをあげて暴れまくるベース、ザクザクのやんちゃなギター。ほどよくしゃがれたワイルドなボーカル。音楽はどんどん進化するものだし、もちろんそれは歓迎すべきもの。だがその一方で、変わらないものは音楽の普遍的宝へと熟成されるべきだ。決して古臭いノスタルジーではなく、ドキドキを内包した90年代パンクの降臨! 
2013.04.03
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ASCENSION『FAR BEYOND THE STARS』

61ZtSmcATスコットランド出身のギタリスト、スチュワート・ドカティを中心に2004年に結成されたメロスピ・メタルバンドのデビューアルバム。DRAGONFORCEのニューアルバムかと錯覚しそうなほどの爆走感とテクニカルな超高速ギターワークが光る。終始メロハーな美サウンドがスコールのように降り注ぐのだが、この手のメタルにしてはベースのエッジがしっかり立っていて前面にぐいぐい出てくる。そんな存在感のあるベースに、高速振動する電気ドリルばりのドラミングの迫力がたまらない。重量感のあるハイトーンボーカルも文句のつけようがない。もしかしたらDRAGONFORCEを凌駕する究極のメロスピかもしれない。メロディーセンスは80年代北欧メタルから脈々と受け継がれた伝承の美旋律。と言ってもノスタルジー色より近未来的なクールな華やかさや加速感が強烈で、巨大なエネルギーとなって全身を貫く。耳の肥えたメロスピファンも大納得の一枚!
2012.03.21 
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anberlin『VITAL』

anberlin2002年にフロリダ州で結成されたクリスチャン・パンクバンドの6枚目。タイトでソリッド感たっぷりのハイトーン・スクリーモな楽曲は、もはやパンクの領域に押しとどめておくことはできない。ド迫力で押し寄せる重低音の圧力が全身を激しく揺さぶる。切り裂くような張りつめたスクリーミングは、クリアーで透明な存在感を誇示している。永久凍土の分厚い氷を一瞬で真っ二つにできるレーザー光線を乱射しながら突き進んでくるような音楽に恐怖すら感じる。いや、その恐怖こそが至福と快感なのだ。ブレスを入れず主旋律を次々と重ねてきたり、裏でリズムをとりパーカッシブなアレンジを見せたり、キラキラのキーボードや機関銃のようなドラミングなど、どれをとっても完成された音の芸術と言える。とにかく音数が多く、まったく飽きない熱血サウンドにニヤニヤが止まらない。しかもエモ曲まで用意されていて何度繰り返し聴いても興味は尽きない。
2012.10.16
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ALL TIME LOW『Don't Panic』

twi22003年にメリーランド州で結成されたメロコアバンドの5th.。メジャー契約したものの今回はインディーズに戻ってリリース。デビュー当初から日本でも人気があり、安定した楽曲をドロップしてきた。力強いラウド感と濃厚な音密度と美旋律は期待以上だ。メロディーのセンスの良さやノリのいいリズムの刻み方は言うまでもない。加えて、絶妙な起伏や、しっかり腰のある骨太なサウンドで、ライヴ映えするドライな仕上がりにしている点は高く評価されるべき。だからパワーとスピードに頼らない楽曲が成立するのだ。歯切れがよく、歌メロにピッタリ寄り添うようにアクセントをつけたリズムは、ライヴでみんなが盛り上がること必至。美しいコーラスや、シンガロングしやすい印象的なフレーズが次々と積み上げられていく。そしてどこか懐かしいメロコアパンクの初期衝動が根底に敷き詰められている。とにかく頭から尻尾まで ALL TIME LOW 節を堪能できる1枚。
2012.10.17
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ALLiSTER『Life Behind Machines』

twi21995年にシカゴで結成されたメロコアバンドの5枚目。2007年に活動を休止し、スコットがソロ活動に専念するようになり、正直 ALLiSTER はもう終わったかと思っていたが、2010年に奇跡の復活を遂げてくれた。そして今作では黄金期の ALLiSTER が戻ってきたと確信できる手ごたえのあるアルバムになっている。シンプルで郷愁感あふれるメロコアサウンドは何度聴いても飽きない。それどころか聴けば聴くほど楽曲に磨きがかかっていく芯の太い楽曲群だ。レトロに徹したセピアトーン一色のアレンジからも原点回帰のコンセプトがよく伝わってくる。古臭い時代の埃っぽさよりも、鮮やかで魅力に満ちたワクワク感と心地いいノスタルジーの空気に包まれている。素敵な夢を見ているようで、できるならこのまま覚めずにずっと夢の中に居座りたい気分だ。
2012.10.03
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AMBERIAN DAWN『Circus Black』

twi22006年にフィンランドで結成されたシンフォニック・ゴシック・メタルバンドの4枚目。STRATOVARIUSのVo.ティモ・コティペルトがゲスト参加していることでも話題に。女性ソプラノVo.ハイジ・パルビアイネンの優雅で壮大なボーカリングが、ファンタジックな亜空間を魅力的に作り上げている。厚みのあるオーケストレーション・アレンジや陶酔するシンセ、シネマチックな展開などは、すべて彼女の天使の歌声を支える土台に思えるほど。ティム・バートンの奇妙な非現実世界を宇宙レベルに押し広げたような魅惑たっぷりのサウンドが脳神経を支配する。クサメロ美旋律やネオクラシカルなギターワークも色を添え、メタルファンが求める要素を広範囲でフォローした多彩な音楽性にも圧倒される。ただ美しくドラマティックなだけではない、メタル魂を激しく揺さぶる筋金入りの一枚。
2012.03.02
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the anthem『High Five』

twi22005年に結成されたイタリアのメロコアバンドのデビューアルバム。イタリアにおいてはパンクの先駆者で今やプロデューサーとしても手腕を振るう VANILLA SKY のブライアンが手掛けた作品。BLINK 182 や GREEN DAY のコピーをしていたこともあり、90年代青春パンクに初期 VANILLA SKY のフレーバーで味付けしたような古典的パンクビート。クリアーなハイトーンボーカルにジャリジャリのギター、ズンズン響いてくるエッジーなベースライン、歯切れのいいスネアの快感サウンド。ピュアなパンクの良さを再確認できる上質な楽曲群に癒される。癒しと言えば、抒情的な熱いバラードも圧巻。アコギやホーンの使い方も絶妙。バラエティーに富んだ曲作りで、変化をつけた構成で飽きさせない。特にベースをかなり前に出したTDで、美しいメロディーをうまくリードしている。耳の肥えたパンクファンも納得の1st.。
2011.12.14 リリース
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ANCIENT BARDS『Soulless Child』

twi22007年にイタリアにて結成されたシンフォニック・パワーメタルバンドの2nd.。女性ボーカル、サラ・スクワドラーニの透明感ある声と重厚なクワイアが絡み合う。ほとんどブレスなしに早口で歌ったかと思うと伸びのある歌メロに変わり、合唱が重なる。そしてシンフォニック+教会音楽。特にゆったりプレイされる優美な弦楽隊とスピードに乗った疾走感たっぷりの弦楽隊のコントラストは圧巻! さらにブラストしまくりの迫力あるドラミングとファンタジックなシンセ、ネカクラ的なギターが幻想的な臨場感を作り出す。メリハリのある絶妙な転調のRPG的展開はもう鳥肌ものだ。鳥肌と言えば、渾身のパワーバラードに脱帽する。またこのジャンルにしては珍しくベースラインをぐんと前に出してシンセとアンサンブルする場面もある。とにかく完成度の高い強烈なエピックアルバムと言える。ボーナストラックは、FFⅩの『ザナルカンドにて』のカバー。
2011.12.14 リリース
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American Hi-Fi『Fight The Frequency』

twi22001年にボストンで結成されたメロコアバンドの4th.。前作から5年もブランクがあるため、正直まだ活動していたのかと思ったほど。2005年に売れっ子プロデューサーのブッチ・ウォーカーを迎えて3rd.をリリースし、映画『スーパーマン・リターンズ』のサントラにも参加するなど日本でも評判は良かった。今回は自身のレーベル「Hi-Fi Killers」からのリリースで、ジャケットは紙が1枚だけで歌詞カードすらついていない。あまり期待せずにプレイボタンを押したら、みずみずしい極上のパンクサウンドがはじけ飛んできた。まだ健在だったなんてレベルじゃない、あまりにもステキすぎる。キャッチーでエモい良質のメロディーは、懐かしいとか新しいという次元の話ではなく、あまりにもピュアで心にストーンと入ってくる。アリーナロッカーがやりそうなスケールのあるバラードは確実に泣けるし、青っぽさのない熟成されたメリハリサウンドに酔いしれる。哀愁レトロのAORからハードコア、グランジまでを往来する大きな振り幅も魅力。決して声を張り上げて力まかせに歌い込むのではなく、倍音の強い声でナチュラルにさまざまなテイストの楽曲をこなしていくボーカリングもさすが。まさに普遍的なバンドサウンドだ!
2010.08.17 リリース
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AUTOMATIC LOVELETTER『truth or dare』

twi22007年アメリカ、フロリダ州にて結成されたポストハードコアバンドのデビューアルバム。同じフロリダ出身のバンド VERSAEMERGE と同じベクトルのパンク meets モダンヘヴィネスな女性ボーカルバンドだ。PARAMORE ファンを直撃するハードでキャッチーなメロディー。時にはエモ全開な曲でハートをせつなくしめつける。ハスキーでパワフル、かつ感情豊かなジュリエットのボーカルには本当に惚れ惚れする。ハードコアに飛ばしまくるアグレッシヴでヘヴィーな楽曲から、ストリングスやアコギ、ピアノを効果的にフィーチャーして熱く歌い上げるパワーバラードまで聴きどころは無数にある。重低音サウンドに美しくドラマティックなシンセを加え、パーカッシヴな音作りをしているため、重々しい密度があるにもかかわらず、エアりーで爽快な印象を受ける。ドラマティックに情感に訴えかけるアレンジはかなり卓越している。そんなスケール感のあるアレンジと、バンドの磨き込まれた実力は絶賛すべきだろう。特に心地よい高揚感に満ちたリズムを生み出すドラムは絶品。楽曲の大切な根になって大地をガシっとつかんでいる。
2010.07.20 リリース
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AMBER PACIFIC『VIRTUES』

twi22002年、ワシントン州シアトルにて結成されたメロコアバンドの3枚目。ボーカルとギターがメンバーチェンジし、レーベルも変わってしまったが、それが AMBER PACIFIC にとって大きな進化となった。大地に深く根を下ろした重低音は、どっくどっくと力強く鼓動するベースやキックが大きな音圧となって迫ってくる。ノイジーで心地よいギターサウンドは、時にパワフルに、時にエモく、それでいてスリリングでキャッチーだ。レトロな爽快さでエバーグリーンなキーボードもまた良い味付けだ。もちろんストップ&ゴーはうまく、メリハリを明確につけて、ほどよく転調しているが、疾走感はずっと維持したままだ。とても素直なカラっとした王道メロコアなのに4、ドラムのリズムの刻み方が多彩で、フレーズごとに細かく表情を変える。しかもハードコアなアグレッシヴで攻撃的なドラミングで楽曲全体をリードしている。そんな中、時折シンフォニック・サウンドが入ってくるのには驚く。ぐぐっとスケール感が大きくなるし空気も変わる。このあたりの音のこだわりが、退屈な変わり映えしないメロコアとは一線を画している。もちろんお約束のバラードも極上!
2010.04.13 リリース
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ANCIENT BARDS『The Alliance Of The Kings』

twi2イタリアのシンフォニック・メロスピ・メタル・バンドのデビューアルバム。相当耳の肥えた劇メロファンをもうならせるドラマティックな展開とメロスピを追求した激走。ネオクラシカルなギターテクニックと幻想的キーボードとのアンサンブル。時にはゴシックなピアノまで入る。壮大で重厚なシンフォニックでエピックな作りこみには脱帽するのみ(ホルンを前に出したミックスも奥行と重みがあり絶品)。特筆すべきは女性ヴォーカル、サラのパワフルで圧倒的な存在感のあるボーカル。モダンヘヴィネスやオペラなどの要素をすべて吸収し、男性顔負けの迫力と女性ならではのしなやかさを実現。まさにシンフォニック・メロスピの様式美に舞い踊る美しき戦士。そこにクワイアが重なるので、至福のカタルシスに包まれ、異空間に身体と魂をもっていかれそうになる。アコギとキーボードによる哀愁バラードも極上で、ケルティックなフィドルまで登場する。 「ファイナルファンタジー」シリーズに影響を受けたと言うだけあってファンタジックRPGの世界観と劇的な転調も聴きどころ。デビュー前にイタリア国内でライヴ・コンテストに出場し、毎回のように優勝していたというエピソードもうなずける。また新しい神話がここから始まる。
2010.04.21 リリース
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ARTIST VS POET『FAVORITE FIX』

twi2アメリカ・テキサス州で2007年に結成されたメロコアバンドのデビューアルバム。目が痛くなるくらいの青空の下で流れている純正メロコアの高揚感たっぷりサウンド。時にはウエットなデジタル・ダンサブルのハネ曲もあるが、もともとアコースティック・プロジェクトとしてスタートしたバンドだけあって、ピコピコした印象をまったく受けない。エモいミッドテンポのナンバーもドラマティックで、クレッシェンドしていく演出とともに美しくストリングスも見事。メランコリックなピアノをフィーチャーしたスローバラードも絶品。似た曲ばかり寄せ集めていないのもこの手のジャンルとしては強い魅力だろう。とにかく美メロとキャッチーなポップ性はすばらしい。疾走感やパワフル&ラウドな作り方ではなく、じっくり丁寧にグッドメロディーをひとつひとつ編みこんでいくような精神が楽曲に注入されている。キラキラのカウンターメロディーによく延びるハイトーンVo.とキレイなコーラス、シンプルだけど飽きない楽曲。耳の肥えたメロコアファンを満足させるのに十分なクオリティーだ。
2010.03.02 リリース
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ALL TIME LOW『NOTHING PERSONAL』

twi2メリーランド州出身のメロコアバンドの2nd.。2003年の結成時は全員高校生で、MOTION CITY SOUNDTRACK、ACCEPTANCE、GYM CLASS HEROES、CARTEL、THE ACADEMY IS... といった有名バンドとツアーをこなし、EPがインディーズチャートで20位に(リリース直後に高校を卒業)。 2007年のフルアルバムは全世界で30万枚以上をセールスし、今作は全米アルバムチャート初登場4位と加速的に人気を伸ばしている。ドラマティックですべてがフックになるメロディーと、迫力と厚みのある音圧、透明感あふれるサウンドが特徴。さらに今作は、ずいぶん大人になった印象がする。やんちゃに暴れまくるのではなく、おちついた中に、密度の濃い美メロをギュギュッと詰め込んだ余裕のプレイを見せつけている。先にリズムが出て、リリックがあとから追いかけたり、重心を低くした腰のあるベースやキックが活きてたり、昔懐かしいロックテイストを盛り込んだりと、とにかくこの若さで貫禄すら感じる(まだ彼らは中堅の域にも達していないのだが)。エネルギッシュでエッジの立った超クリアーな極上メロは涙もの。もちろん捨て曲ナシの精巧で完璧な完成度。
2009.07.08 リリース 
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ABANDON『SEARCHLIGHTS』

twi2エングラー兄弟を中心に結成されたテキサス出身の5人組エモバンドのデビューアルバム。ハイトーンでパワフルなVo.が印象的。アコギの生っぽい音と、キラキラのソリッドギター&シンセサウンドが、クリアーに天空へと舞い上がる。だからと言ってエレクトロ・エモとレッテルを貼ってしまうのはやや乱暴すぎ。あくまでもゴリゴリのエモパンクが基軸。SAOSIN をエモっぽくしたような冷たくモノトーンの激しさを持ったアルバム。スクリーム寸前のVo.もスリリングな空気を演出し、楽曲の中心で凛と立つ。リズム隊がしっかりしているところに、過剰になりすぎない装飾でウェットな異次元空間を作り出す。静と動の使い分けもうまく、バラードというより、どこか幻想的で森の奥でゆっくりと流れる時間のような楽曲も盛り込まれている。
2009.06.15 リリース
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ギャラリー
  • courage my love『Becoming』『For Now』
  • courage my love『Becoming』『For Now』
  • AMBERIAN DAWN『Magic Forest』
  • VICTORIUS『DREAMCHASER』
  • STREAM OF PASSION『A WAR OF OUR OWN』
  • DERDIAN『HUMAN RESET』