VICTORIUS『DREAMCHASER』

022004年にドイツで結成されたメロディック・スピード・メタルバンドの3rd.。典型的な美メロで耳ざわりのいいキャッチーな楽曲。そこにジャーマン・メタル特有のゴツゴツしたワイルドな重みが加わっているため、ぎゅっと密度が増している。重低音サウンドは大満足の迫力だし、洗練されたギターワークにスピード感もあって、音の感触は快適。時折メランコリックに針を振りながら腰のあるボーカルでたたみかけてくる。特筆すべきは、まるでシンフォニック・エピックアルバムのような起伏に飛んだ曲展開だ。音色としてはシンフォニック要素などひとつもないのだが、こまめにシーンや温度を変えてくる手法は飽きさせない工夫と言える。もし彼らのサウンドに手の込んだ演出が一切なかったら実に退屈な曲になっていたはずだ。冷蔵庫の中にある残り物だけで作った料理が、調理方や味付けや彩りなどの演出効果で、とんでもなく美味しいものになった感じ。これなら毎日でも食べたくなる。
2014.10.22
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vanilla sky『The Band Not The Movie』

vs2002年にイタリアで結成されたメロコアバンドの4th.。イタリアではパンクが見向きもされない時代から地道に活動を続け(日本ではメロコアブームに乗ってデビュー当初から高い人気だった)、今や本国では重鎮としてリスペクトされ、プロデュース業もこなす。メロディアスで軽快なスピード感に加えて、重心の低いずっしり厚みのあるラウドな音がどんどん降ってくる。特にベースの暴れっぷりは強烈で、太い柱を地面に打ち込んでいくようなバスドラや骨まで響くスネアとよくマッチしている(スネアの音色は惚れ惚れするほど素晴らしい)。ライヴでは最高にはじけられそうなアップリフティングな曲が並ぶ。ストップ&ゴーのツボを押さえたパワフルな音が炸裂する。変則的なことは一切せず、メインストリートをまっすぐ走る王道パンクなのだが、ワンフレーズごとに新しい景色が広がる新鮮さがある。それに加えて新人バンドなみのエネルギッシュさ。こういう年の取り方をしたパンクバンドは手ごわい!
2013.01.23
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VALENCIA『DANCING WITH A GHOST』

twi2アメリカ、ペンシルバニア州で結成されたメロコアバンドの3rd.。プロデュースは、Blink 182、JIMMY EAT WORLD、MADINA LAKE を手掛けたマーク・トロンビーノが担当。Hotseekers チャート11位をマークしたアルバム。メロコアとカテゴライズしたが、ジャンルレスと言えるほどいろんなタイプの楽曲が収録されていて正直驚きを隠せない。もちろん骨格はパンキッシュな音で成り立っているが、レトロなロックスタイルの一面を見せたかと思えば、ノスタルジックでエモに舵を大きく切ったもの、ピアノやストリングスをフィーチャーした壮大でドラマティックなナンバー、バッキングボーカルをスクリーミングさせたパワーバラード、ダンサブルでシンガロング必至のナンバーなど、同一バンドとは思えないほどバラエティー豊かなラインナップ。大きな特徴は、サントラにできるのではと思えるほどどれもが物語性が強いこと。聴きながら映画のワンシーンを勝手に創作してしまいそうになる。VALENCIA がこんなにも表現の幅が広く、奥深い楽曲づくりのするバンドだったとは意外。彼らにとって間違いなく名作になるアルバム。
2010.10.20 リリース
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VERSAEMERGE『FIXED AT ZERO』

twi2モダンヘヴィネスとパンクが融合したフロリダ出身の女性ボーカルバンドのデビューアルバム。PRAMORE の登場以降、というか PARAMORE がガールズポップパンクからヘヴィーなロックへと進化したことによって、女性ボーカルバンドに新しい道が切り拓かれたように思う。モダンヘヴィネスやゴシックとまではいかないが、パンクから派生しているのは明確で、ハードコアやオルタナとも違う新しいサウンドだ(単純にポストハードコアと呼ぶにはもったいない)。やはり特徴は深い闇を背負った倍音の強いボーカルだろう。エモーショナルで悲痛な叫びが、楽曲の太い柱になっている。ストリングスを生かしたヘヴィーサウンドは映画のサントラを思わせるドラマティックでミステリアスなものだ。ゴシックメタルのファンが聴いても物足りなさを感じないほどの神聖で崇高な世界観を築いている。ねばりと腰のある音作りは言うまでもないが、絶妙な緩急のつけ方やスピードを上げていないのに何かにせかられるような疾走感のあるメロディーの重ね方をするあたりは脱帽。メンタルにビシビシッと迫ってくる存在感のある音はまさに圧巻。
2010.06.29 リリース
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VANILLA SKY『FRAGILE』

twi22004年に鮮烈なデビューを飾ったイタリアのメロコアバンドの3枚目。本国ではパンクの道を切り拓き、ロック界の重鎮と呼ばれるほどの地位にのぼりつめた。近年はプロデュース業も多忙となった。そうなってくると本業のバンド活動がトーンダウンしてしまったり無期限活動休止なんてことになりがちだが、実にクオリティーの高いアルバムをドロップしてきた。口当たりの良いやわらかいポップパンクなにのに、奥深く聴きごたえのあるずっしりしたアルバムなのだ。血管が浮き出るくらい力を入れて汗とツバを飛ばしながらプレイするのではなく、ほどよく力を抜いてこのうまさはちょっと憎い。磨きのかかった大人のパンクサウンドは、まさに貫禄! フレーズのひとつひとつに重みと説得力がある。さらっと聞き流せない音。もちろん、前述のように力は良い意味で抜けている。20曲も収録されていて(1曲はレディガガのカバー)、すべてテイストが違うので、次はどうなるのだろうと小説のページをめくるみたいにわくわくしながら聴き進められる。全曲、心にやさしくフィットして、快感が全身を突き抜ける。
2010.04.21 リリース
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VEDERA『STAGES』

twi22004年にデビューしたミズーリ州出身の4人組エモバンドの2nd.。AORやカントリー・テイストの素朴でピュアなPOPエモの美しい旋律に心が浄化されていく。やわらかい癒しのメロディーに加えて、紅一点 KRISTEN の抒情あふれるボーカルが心地よく胸にすとんと落ちてくる。倍音が強く、クリアーで純真なちょっと幼い声で感情をこめて歌う。舞台女優も顔負けの表現力で、どこかはかなげで悲しく、それでいてちょっと力を込めるだけでぐんとパワフルな表情になる天才的なボーカルリストだ。楽曲のセンスも良く、ミッドテンポのアンビエントなPOPが中心だが、ストップ&ゴーの緩急のつけ方がうまく、静と動の起伏がより彼女の歌にドラマティックな要素を付加している。クレッシェンドしていくピアノバラードなど文句のつけようがなく素晴らしい! もの悲しいメロディーなのに音のひとつひとつが輝きながらはじける雨粒のように透明で光りながら躍動している。ティーンエイジだけでなく中高年リスナーまで幅広くカバーできる普遍的実力を持ったバンド。世界的ヒットにならないのが不思議だ。エンドレスでずっと一日中聴いていたい中毒性の高いアルバム。
2010.02.02 リリース
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VALENCIA 『We All Need A Reason To Believe』

twi2ペンシルバニア州フィラデルフィア出身の5人組メロコアバンドの2nd.。このアルバムからメジャーとなり、ビルボードの Hotseekers チャートで初登場6位を記録した。2004年にデビューしたときは、エネルギッシュでパワフルなメロコアで暴れまくっていた印象が強かった。今作は、そんな荒っぽさはなくなり、円熟味をおびたメロウな美メロなパンクナンバーがぎっしり詰まっている。パワーが失速したわけではないので、前作のようなハードコア寄りの曲が好きなリスナーも十分納得できる方向性だろう。殺傷能力そのままに美しい凶器に変身した感触。ラウドにうなるギターとキラキラのギターのアンサンブルは見事。ぶ厚く手数の多いサウンドにメリハリを効かせた飽きない曲構築。コーラスで立体感を演出し、覚えやすくシンガロングできそうな美メロを積み重ね、全フレーズがフックとなる贅沢さ(元THE STARTING LINE のケニーがゲストボーカルで参加)。パワーバラードでさらに感情表現のベクトルを広げている。デリシャスでジューシーな豪華すぎる大人のパンク!
2008.09.24 リリース
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vanilla sky『CHANGES』

twi22002年にイタリアのローマで結成されたイタリアのメロコアバンドの2nd.。ともにステージを一緒にしたことから+44 のMARK HOPPUS がレコーディングに参加し、メジャー契約もはたしてのリリースになった。2004年の前作「Waiting for Something」は、荒削りだが良い意味でとがったデビューアルバムだった。本作の2nd.では、メンバーのルックスもオシャレになって、サウンドも洗練されたエモ系へと進化。はじけたポップチューンからハードエッジ、ピアノエモなどをチョコレートでコーティングして色とりどりのトッピングをしたような楽曲がコロコロと転がり出す。時にはダンスチューンか?と思わせるほどウェットなものまであったり。イタリアでは母国語で歌わないとヒットしないし、パンクはチャートには入りにくいため、英語で歌い世界中をツアーする道を選んだだけあって、前作に比べると格段に腕を上げたという印象。ラウド感をキープしつつ、かろやかにバウンドしたサウンドは都会的で、ストップ&ゴーのメリハリも効いて、メジャーならではの華やかな世界へと見事脱皮を果たしている。
2008.01.23 リリース
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VALENCIA『THIS COULD BE A POSSIBILITY』

Just_Surrenderペンシルバニア州フィラデルフィア出身の5人組メロコアバンド。かゆいところに手がとどく快感メロ。カッティングを生かしたセンスのよいざらつきギターと、たたみかける連射系繊細ボーカルが芸術的に折り重なる。ゴツゴツでもなくサラサラでもない音色は、メガネをかけた優等生が1対5で不良を1分で倒してしまったような気持ちよさ。メロの起伏があまりないのに、どこか懐かしい叙情感すらただようスピードチューンの連続。すべてがキラーになりうる極上の楽曲群。あくまでもシンプルに料理をして、いかに飽きないものに仕上げるかといったお手本のようなアルバム。10トラックすべて緊張感をキープしながら常に新しい景色を見せてくれるのは圧巻。
2005.10.25 リリース
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VISION DIVINE『THE PERFECT MACHINE』

GuardiansSTRATOVARIUS の Timo Tolkki をプロデューサーに迎えての4th.。イタリアが誇るメロディアス・パワーメタル。永遠の命を手にした未来の物語が1枚のアルバムの中で展開する。スピードに乗ってどんどん加速するパワフルさに加え、転調でスピードダウンした際のメロディアスな広がりは絶妙。ある意味劇メロ系メタルの基本中の基本なのだが、すこしずつ変化をつけていくリフなど細かい気配りと丁寧な仕事が見てとれる。けっしてドラミングはダダダ系ではないが、ギターの煽り方がアグレッシヴで実に爽快。幻想と現実のあいだに流れる時間のメタリックな匂いが、ゆっくり充満していく。核融合をはじめたシナリオが膨張してリスナーを飲み込む。この計算し尽された世界から逃れることは出来ない。
2005.10.26 リリース 
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vanilla sky『WATING FOR SOMETHING』

ZenoTHE ATARIS、YELLOWCARD、NEW FOUND GLORY などの実力派メロコア・バンドに影響をうけたイタリアのバンド。せつないラヴソングからイラクに関するアメリカ批判まで、大きな振れ幅をみせるリリック。楽曲は、スピードで押すのではなく、しっかりメロを聴かせてくれるし、何と言っても音の厚みに圧倒される。コーラスの美しさ、キーボードが効果的に入り、全体をリードするドラミングの弾ける感覚は大きな魅力。特にリズムギターは、ありきたりにならないようバッチリ工夫。アンプラグドなナンバーでは、ストリングスの美しい聴かせ方を解かっている。まさにメロウなパンク。しかも音楽理論をきちんとふまえて音を自在に操る。ほんのり哀愁スパイスも忘れていない。
2004.03.30 リリース
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ギャラリー
  • courage my love『Becoming』『For Now』
  • courage my love『Becoming』『For Now』
  • AMBERIAN DAWN『Magic Forest』
  • VICTORIUS『DREAMCHASER』
  • STREAM OF PASSION『A WAR OF OUR OWN』
  • DERDIAN『HUMAN RESET』